赤ちゃんの泣きと「輸送反応」

赤ちゃんはよく泣くのが普通。でも…

 人間の赤ちゃんは、チンパンジーなどと比べてもよく泣き、なだめるのが難しい場合があるといわれています。
 「泣き」に関する心配で病院を受診した子どもの95%には特に医学的な問題は見つからず、正常な範囲とされます。それでも、あまり泣かれると保護者は心配にますし、ストレスに感じることもあります。
 
 赤ちゃんの泣きを確実に鎮める、安全で手軽な方法は残念ながらまだ確立していません。中世以前では、アヘン入りシロップが使われたこともあったほどです。

輸送反応とは

 抱き歩きによって乳児の泣きが減少しおとなしくなることは、黒田研究室(当時 理化学研究所 脳科学総合研究センター)の論文(2013年)にて初めて実証されました。マウスなど他の哺乳動物の赤ちゃんが親に運ばれた時にも、同じ反応が見られます。これを「輸送反応」と名付けました。

 

プレスリリース:抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組み

https://www.riken.jp/press/2013/20130419_2/ )

Youtube動画:抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組み

https://www.youtube.com/watch?v=VNCfbFEmwJI )

 

 さらに5分間抱き歩きを続けることにより、泣いていた赤ちゃんの眠りが促進されることも報告しています。

 

プレスリリース:赤ちゃんの泣きやみと寝かしつけの科学

https://www.riken.jp/press/2022/20220914_1/ )

Youtube動画:赤ちゃんの泣きやみと寝かしつけの科学

https://www.youtube.com/watch?v=DahZaguS5YA )

赤ちゃんの泣き・睡眠の謎にはさらなる研究が必要

 しかし、赤ちゃんの泣きと眠りにはまだ多くの謎があります。例えば、せっかく眠った赤ちゃんをベッドに寝かせると、1/3の赤ちゃんは起きてしまうことが2022年の研究でわかりました。どうしたら赤ちゃんの眠りを妨げずに寝かせることができるのでしょうか。

そこで現在当研究室では科学技術振興機構 CRESTの支援を受けてPiBabyを開発し、ご家庭から送信された赤ちゃんの生体情報をもとに、泣きや寝かしつけの研究を行っています。

 『育児DX:ウェアラブルシステム開発による乳児夜泣き制御と入眠予測』

https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/project/1111115/1111115_2023.html